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高まる「日常を大事にしたい」という気持ち。本麒麟×バーミキュラ、ヒット商品“生みの親”が語るコロナ時代 - 朝日新聞社

2020年ほど、自宅で過ごす時間を見つめ直した年はなかったと思う。ワークスタイルや人との付き合い、オフの過ごし方の変化はもちろん、使うもの、身につけるものなど、生活を取り巻くあらゆるものを選ぶ基準が変わった。もちろん、日々口にするものも。

新ジャンルのアルコール飲料「本麒麟(ほんきりん)」と、鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」。おうち時間を彩るヒット商品を生んだ2社は、この変化をどう見たのだろうか。キリンビール社の味の番人であり、中味の総責任者であるマスターブリュワー・田山智広さんと、バーミキュラを開発した老舗メーカー「愛知ドビー」の副社長・土方智晴さんが語り合った。話は、開発の苦労から、ものづくりへのこだわり、消費トレンドへとつながっていく。

本当にいいもの、確かなものを選ぶ時代

――お互いの商品の印象は

田山 正直おどろきました。フライパンを使って、まずはシンプルな目玉焼きから作ってみたんですが、最高においしいものができてしまったんですね。昨日も、ステーキを焼いてみました。今までだったら、例えば肉だったら、ハッシュドビーフにしようかな、ビーフストロガノフにしようかな、とか色々凝ったことを考えるんですけど、このフライパンならシンプルにステーキでいいじゃん、という風に変わったんです。肉のうまみもしっかり感じられますし、本当に上手に焼けるので。

土方 私、ビールとか新ジャンルとかに限らず、基本的にバーミキュラの料理に合うようなお酒しか飲まないんですよ。口から食べ物がなくなったあとも続くような甘みとか余韻とか、雑味のなさ、それが私たちがおいしいと思っていることなんですけども、「本麒麟」もまさにそうなんです。(本麒麟を飲んで)ジャンルってどうでもいいな、と痛感させられました。それぐらいおいしかったです。

高まる「日常を大事にしたい」という気持ち。本麒麟×バーミキュラ、ヒット商品“生みの親”が語るコロナ時代

バーミキュラの土方智晴さん(左)と、キリンビールの田山智広さん

――二つのブランドが支持されている理由は?

田山 うまさに尽きますね。それも気取った、変わったおいしさではなく、大切な日々の時間に寄り添う、しっかりと信頼できる、普段使いのおいしさ。そこが支持されているポイントかなと思っています。

土方 バーミキュラは高額な商品ではあるんですが、日々を上質に生きたい、丁寧に暮らしたいという方、日常の中で小さな感動を積み重ねていくような暮らしっていいな、と思われる方がお客様だと思っています。

田山 私も使ってみて料理をしたくなりました。たかが目玉焼きなんですけど、毎回つくるたびにちょっとした工夫を加えて、次はどうしようかなというワクワク感が伴うというんですかね、今までだったら、ただ食事を作ろうと思っていたけど、その時間の質が変わった気がします。

高まる「日常を大事にしたい」という気持ち。本麒麟×バーミキュラ、ヒット商品“生みの親”が語るコロナ時代

バーミキュラの土方智晴さん

土方 普通に作っても想像以上においしくなる、というのはすごく大事で、それが感動体験になると思っています。たくさんの情報があふれているなか、もともと特別だったりとか神秘的だったりしたものが、そうではなくなってきている気がします。見せびらかして自慢するというよりも、本当に自分がいいと感じたものに投資したい、感動が欲しい、そんな時代になってきているのかな、と思っています。

田山 嗜好(しこう)品も、みなさんTPOに合わせていろんなものを選ばれていると思うんですけど、毎日がハレの日ではないので、普段飲むときに安心して飲めるいいもの、変わったものではなくて日々飲みたいものを、という風になってきているのかな、と思います。日常を大事にしたいという気持ちが高まっていて、ちょっとした上質感のあるものや、いいもの、確かなものをチョイスするということが大事なポイントなのかな、と思いますね。

“最高品質”を作り続ける難しさ

土方 「本麒麟」の雑味のない優しい味は、どのように作られているんですか?

田山 原材料から吟味していますし、できるだけ雑味を押さえ、うまみを出していこうという技術。言ってしまえばそれに尽きるんですが、そこにものすごくこだわっています。というのも、本当のおいしさって、その場限りではないと思うんですね。「また飲みたい」と思わせるおいしさが、我々の目指しているところです。そういった意味でアフターテイストはすごく大事で、それを支える味、余韻があって、ある程度したら消えていく。そんな味のバランスをつくることに相当注力していますね。

土方 ものづくりの話だと、鋳物の商品ってつくるのがすごく難しいんです。バーミキュラも1万個の試作品をつくって、やっとできて、たくさんのご注文も頂いたにもかかわらず、製造的な問題で次の日から全く製造できなくなってしまった。本当に極端な話をすると、今はまぐれでできているだけだ、という認識なんです。

田山 麦やホップは一つ一つ性質が違うのでビールを作るのも大変ですが、一番難しいのは酵母。というのも、酵母は生き物なので、てなずけるどころか、我々が酵母に操られているじゃないかというくらい振り回されていますね(笑)。ただ、そこをコントロールするのが腕の見せどころですし、酵母や原材料のポテンシャルを最大限に引き出して、願わくば我々の思い通りに発酵させて、というのを製造のところで心掛けています。

高まる「日常を大事にしたい」という気持ち。本麒麟×バーミキュラ、ヒット商品“生みの親”が語るコロナ時代

キリンビールの田山智広さん

土方 バーミキュラをつくる前は、元々下請けで小ロット生産ばかりやっていて、「大量生産って楽でいいな」って社長である兄と話をしていたんですよ。同じやり方を徹底すればいいし、管理もしやすいし。でも実際、バーミキュラを量産というか単一的に作ってみて、同じものを最高品質で作り続けることはこんなに難しいのか、と分かって反省したんですよ。

――それぞれの商品の技術的なポイントは

田山 原材料で言うと、ドイツの貴重なヘルスブルッカーホップを一部使用していますが、2020年のリニューアルでこの量を増やして、おいしさを高めています。でも、実はホップは複数種類を使っているんです。中でも、チェコのザーツというところのホップを「最高級ホップ」として評価していまして、これをふんだんに使うことが、キリンのDNAになっています。世界的に見ても最高級のホップをベースにしていることが、「本麒麟」の良さを下支えしています。

土方 バーミキュラのお鍋は、厚さが3ミリぐらいの鋳物で、それでも薄いのですが、フライパンにすると4、5キロになって、片手で持てなくなってしまいます。いい性能があっても、使いにくいと毎日使っていただけない。なので、バーミキュラのフライパンは1.5ミリの肉厚で鋳物を作るのですが、ホーローでコーティングするためには800℃で焼かないといけないんですね。

800℃って鋳物の変態点を優に超す温度なので、気を付けないとグニャグニャにひずんでしまいます。実際、何百回何千回もひずみました。ホーローコーティングを維持しながらひずまないように、それを実現するのが一番難しかったです。結局、建築のように20パーツに分けて、0.1ミリ加減で設計し、型を作って焼いて、という工程を繰り返し、1.5ミリの形状を実現できました。

高まる「日常を大事にしたい」という気持ち。本麒麟×バーミキュラ、ヒット商品“生みの親”が語るコロナ時代

(上から時計回りに)バーミキュラ フライパン、オーブンポットラウンド、バーミキュラ ライスポット

めざすのは「人間関係が変わるようなおいしさ」

――来年の展望は? 今後、どんな商品が支持されると思いますか

田山 コロナは、仕事のやり方も含め、意識せず当たり前と思っていた常識や時間の過ごし方を見直すきっかけになったのかなと。これは一つのターニングポイントなので、考え方が変わると、元には戻らないと思います。お酒業界の事情で言うと、外飲み需要より家飲み需要が増えたとか、お客様のマインドの変化は大きいです。

コロナで、多くの方が日常の楽しく幸せな時間の大切さに気付き、場合によっては命の危機感や不安感も感じている。その中で、普段の時間を彩ることができる商品は、ご支持いただけるのではないかと感じています。「おいしさ」を感じるのは、生き物としてたくましく生きていくために備わった能力、という点からすると、「おいしい」と感じる力が生きる力を引き出すと思うんです。そこに少しでも貢献したいです。

土方 バーミキュラのフライパンは現状4カ月ほどお待たせすることになっているのですが、もともと月産5千台を予定していたものが、来年年明けぐらいからはなんとか2万台に増産できそうです。日本でしっかりとお客様に届けられるようになったら、アメリカ、中国への展開が決まりそうです。

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バーミキュラの土方智晴さん(左)と、キリンビールの田山智広さん

――これから求められる「本当のうまさ」とは

土方 おいしさって、いろんな段階があると思っています。実際に作って、自分が思っていたよりもおいしくできた、そうすると料理が楽しくなって、人に食べさせたくなった。最終的に我々が目指すのは、「人間関係が変わるようなおいしさ」ができたら一番いいと思っていて。おいしい料理ができて、誰か人を呼びたい、ホームパーティーをやりたいなど、今までなかった人間関係ができてくること。そこまでできると、我々が作っている意味があるなと思います。

田山 本当においしいというのは、いつでもおいしいということだと思います。ゴージャスな料理もおいしいですが、3食毎日はきついこともあるかと思います。また食べたくなる、飲みたくなるのがすごく大事かなと。それと、おいしいという感覚は、心の中のおいしさもあると思います。例えば、暗い気分でため息をつきながら「おいしい」というシーンはないじゃないですか。「おいしい」と言うときは、気持ちも上向きになりますし、時間をポジティブに変えてくれます。これからも、勇気が湧いて鼓舞されるようなおいしさを、ぜひ作っていきたいと思います。

(文・&編集部 写真・本麒麟PR事務局提供)

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November 25, 2020 at 08:41AM
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