鎌倉時代から江戸時代にかけて造られ、幻とされていた日本酒が昨年、約330年ぶりに復元された。導いたのは学芸員の熱意だった。
新型コロナウイルス感染が国内でも拡大していた2020年5月、臨時休館を余儀なくされていた静岡県伊豆の国市の江川文庫の学芸員、橋本敬之さん(69)は、文庫が所蔵する約10万点の史料の中からある日本酒の史料を探していた。酒の名前は「江川酒」。江戸時代には韮山代官を務めた江川家でかつて造られていたが、製造方法が残っておらず、「幻の酒」になっていた。
江川酒は鎌倉時代ごろから同家に伝えられてきた。仕えた北条氏が諸国の大名に贈り、銘酒として定着したとされる。「江川酒」と名付けたのは、韮山城を拠点に小田原北条氏5代の礎を築いた戦国大名・北条早雲だと言い伝えられている。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ら「三英傑」にも贈られたとされるが、江戸時代中ごろに幕府による年貢米の徴収が強化されたことで酒米の調達が難しくなり、元禄6(1693)年から製造が途絶えていた。
史料を片っ端から…
「どこかに史料があるはず」…
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